《東京・池袋で平成31年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女、莉子(りこ)ちゃん=同(3)=が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)の公判は、被告人質問が続いている》
《飯塚被告は、時折言い間違いこそあるが、口ごもることなくはっきりとした声で質問に答えていく》
弁護人「最後に免許を更新したのは」
飯塚被告「2017年の5月です」
弁護人「その時には75歳以上だった」
飯塚被告「はい、そうです」
弁護人「更新の検査や講習は受けたのか」
飯塚被告「認知症の検査のようなものを受けました。結果は全く正常で合格しました。講習では、高齢者の運転時の注意のビデオを見ました」
弁護人「講習はビデオだけか」
飯塚被告「運転の実技がありました。当時は実技は希望者だけだったと思います」
弁護人「運転に心配があったのか」
飯塚被告「特になかったです。教官からの指摘もありませんでした」
《質問は、事故当日の状況に踏み込んでいく。弁護人は、この先の証言について、事故車両のドライブレコーダーの映像ではなく、飯塚被告の記憶に基づくものであることを強調。被害者参加制度を使って出廷している遺族の松永拓也さん(34)は、飯塚被告の方にときおり視線を送りながら、ペンを走らせ続けている》
弁護人「同乗者はいたか」
飯塚被告「おりました。妻です」
弁護人「2人でどこへ行こうとしていた」
飯塚被告「昼食の予約をしたレストランへ行こうとしました」
弁護人「なぜ車だったのか」
飯塚被告「電車とバスで行けるのですが、乗り換えに時間がかかるので、車で行きました」
弁護人「予約の時間は」
飯塚被告「12時30分です。自宅を出発したのは12時過ぎでした」
弁護人「間に合う時間なのか」
飯塚被告「急がないで十分に間に合う時間でした。急ぐ用事は全くありませんでした」
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