新型コロナウイルスの感染拡大を受け、神奈川県は「まん延防止等重点措置」の対象地域にある飲食店に対し、酒類の提供を自粛するよう要請する方向で準備を進めている。営業はできるが、酒は出せない――。飲食店や客はどうするのか。
横浜市や相模原市と並んで重点措置が適用されている川崎市。「酒の提供がないならとっとと家に帰るだけ。がまんしますよ」。23日夜、居酒屋で食事をしていた70代男性は言った。
隣接する東京都では、酒類を提供する飲食店が休業要請の対象になることが決まった。都内から人が流れ込む恐れがあるとして、神奈川と千葉、埼玉の3県知事は22日、酒類の提供をしないよう飲食店に要請できるように、重点措置の基本的対処方針などを改定することを国に要望していた。
「ぼうぜんですね。まるで禁酒法みたい」。川崎市川崎区のバー店長(46)は嘆く。感染対策で、定員を40席に絞っている。賃料も高いため、協力金では諸経費をまかなえない。緊急事態宣言の解除後は、協力金は受け取らず午前0時まで営業する。1人客や、2人以上でもマスクをする客が多い。感染対策も徹底しているため、一律の酒類提供禁止には納得がいかない。
けれど、今回は「休業しかないかな」。酒類を提供しても問題ないと胸をはって説明できるが、「なんでこんな時にという世間の目の方が怖い。こそこそ営業したくはない」
同区の別のバー店長(36)も「酒類を出せないなら休業しかない」。関心は、新たな協力金の有無や金額。「こんなことならもっと早く、厳しい措置をとっておけばよかったんじゃないですかね」
県内や都内の1千店以上の飲食店などに酒を販売する横浜市内の酒類卸会社。23日朝から「酒の提供禁止はいつまでなのか」と情報を求める問い合わせが相次いだ。役員の男性は「飲食店への卸しが売り上げのほとんど。受注がなければ売り上げにならない。酒が悪者になっている」と話す。
飲食店の時短営業を受け、同社では個人向けの品ぞろえを増やそうとも考えたが、単価が安く業務用のマイナス分はとても補いきれない。最近、事業転換などを考える企業向けの補助金の存在を知り、銀行に相談している。「いい案はまだない。でも、商売はこれからもやっていきたい」(斎藤博美、大平要、林知聡)
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