政府は新型コロナウイルスの感染拡大が続く東京都、大阪府、兵庫県、京都府への3度目となる緊急事態宣言の発令を23日に決定する。菅義偉首相は前回の宣言を3月に全面解除した際、感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査や、安全・迅速なワクチン接種など総合的な対策を打ち出したが、結果として実効性は上がらず、解除から1カ月での宣言を余儀なくされた。 (村上一樹)
◆5本柱の効果は?
首相は、前回の全面解除を決定した3月18日の記者会見で「感染拡大を2度と起こしてはいけない」と強調。新たな拡大防止策として「5本柱」を掲げた。
①飲食を通じた感染の防止策継続
②変異株への監視体制強化
③感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査
④安全・迅速なワクチン接種
⑤次の感染拡大に備えた医療提供体制の強化―だ。
検査や変異株の監視体制強化では、具体的な数値目標も示したが、達成できていない項目が目立つ。
「戦略的な検査」の中心は、人が集まる繁華街や鉄道駅などでの無症状者のモニタリング検査。PCR検査キットを無料で配り、回収する方法で、首相は「4月には1日5000件の規模で行う」と表明していた。
実際に4月12~18日の週に配布したキットは東京、愛知など13都道府県で計1万6526個。一日平均では約2360個で、目標の半分にも満たない。回収して検査できたのは、さらに少ない一日平均約1450件。野党が当初から「予兆をつかむ規模になっていない」と指摘したように、政府が予兆を把握できないまま大阪府や東京都で感染は急拡大した。
◆猛威ふるう変異株
首相は、変異株の感染者の割合を調べるスクリーニング(抽出)検査を当時の10%から「40%程度に引き上げる」と表明した。4月5日~11日の速報値で、全国での実施率は約36%まで上がったが、感染力の強い変異株の抑え込みにはつながっていない。
5本柱のうち、ワクチン接種や医療提供体制の強化も進んだとは言い難い。
ワクチンは4月21日時点で、医療従事者らのうち2回目の接種を終えた割合は約17%。高齢者は1回目を打ち始めた段階で、接種率は対象者約3600万人の0.1%にすぎない。
医療提供体制は数値目標を示していないが、宣言解除に合わせて政府が決定した対策に「今回の課題を点検・改善し、次の感染拡大時に確実に機能する体制に進化させる」と明記した。しかし、点検・改善の間もなく、変異株の猛威により感染は拡大。大阪府内では3月下旬以降、重症者が急激なペースで増え続け、確保病床を一気に上回った。重症病床は満床状態で、重症者の一部は軽症・中等症病床で治療を続ける事態に陥っている。遠からず東京が同じ状況になっても不思議ではない。
◆責任追及の声
首相は3月の会見で「自ら先頭に立ち、国民の命と生活を守り抜く」と決意を語ったが、現実は宣言発令。共産党の志位和夫委員長は22日の記者会見で「宣言の発令に至ったのは、政府がやるべきことをやらなかった結果だ。現状は菅政権による人災で、その責任は極めて重い」と批判した。
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