【ソウル=桜井紀雄】韓国の元慰安婦らが日本政府に賠償を求めた訴えを却下したソウル中央地裁の21日の判決について、韓国では評価が分かれた。日本政府に賠償を命じた1月の判決と正反対の判断が出たことへの懸念がある一方、司法府の「正常化」とみる論調もある。ただ、日韓関係改善につながるかに関しては否定的な見方が支配的だ。
保守系最大紙、朝鮮日報は22日付で「反日であれば、国際法を無視した判決でも良いというやり方ではダメだ」と題する社説を掲載した。社説は「この裁判は日本の有無罪ではなく、韓国の裁判所が日本政府を裁けるのかという『主権免除』の適用が焦点だった」とした上で「1月の判決は国民感情に、今回の判決は世界の裁判所の普遍論理に従った」と論じた。
一方、ソウル新聞は社説で、1月と今回で判決が正反対になったことについて「主権免除の認定が裁判部によって違えば、裁判所をどう信頼すればいいのか」と批判した。同紙は1月の判決を「歴史的判決」と持ち上げつつ、日本との外交的衝突に憂慮を示した今回の判決に対しては「どの国の裁判所なのか問いたい」と、判決が日本の肩を一方的に持ったかのように皮肉った。
今回の判決が悪化した日韓関係の好転に向け、韓国政府が外交的に動ける空間を広げたとみる専門家がいる半面、韓国の経済紙の一つは「韓日関係改善のきっかけになるには力不足との見方が多い」と指摘する。
左派系紙、ハンギョレの記者も、日韓は北朝鮮や中国に対する根本的な路線が相いれない上、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出決定という新たな対立材料も生じており、この判決によって「韓日関係改善の流れに導くことはできないだろう」と予測した。
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