東京オリンピック・パラリンピック用の警察官仮設宿舎が新型コロナウイルスに感染した軽症者向け滞在施設に改修されたものの、一度も使われることなく元の姿に戻ることが分かった。警察庁が明らかにした。2020年4月の改修と今回の再改修にかかる費用は計約48億円。軽症者の受け入れ判断は東京都が担っていたが、ホテルを優先的に活用したため宿舎が使用されることはなかったという。
宿舎はプレハブ2階建て。江東区、江戸川区、大田区内の計4カ所で、いずれも臨海地区にある。五輪の警備要員として全国から集まる警察官が各部屋を複数人で使用して数千人が寝泊まりする予定だった。
しかし、昨年4月にコロナの感染が急速に拡大したため、政府は五輪延期で当面は使われなくなった宿舎を感染者の滞在施設として活用する方針を決定。約800人の軽症者を受け入れられるよう改修する方針が決まった。
改修は厚生労働省の意見を聞きながら37億円をかけて同4月に実施された。大部屋を「個室化」し、トイレや風呂など水回りの改修もして、約40棟の約770室を軽症者が使えるよう準備した。
軽症者を受け入れるかは療養施設の運営を担う東京都の判断次第だったが、都は個室に風呂やトイレがあるビジネスホテルの利用を優先。そのホテルも空きがある状況が続き、ホテルの入所者は、最も多かった20年12月下旬でも約1100人で、確保した室数の半分強は空室状態だった。
一方、警察庁は今夏の五輪が近づけば、警察官の宿泊施設としてこの宿舎を使うことを予定していた。東京都も厚労省に「ホテルへの入所を優先しており、今のところ間に合っている。必要ない」との意向を伝えており、宿舎を元通りに戻す工事の実施が決まったという。
警察庁は「東京都の意向を踏まえ、本来が五輪の警備要員のための施設なので再改修することにした」としている。再改修の費用は11億円と見込んでいる。
東京都は「コロナ対策に全力で取り組んだ中での動きだった」とし、「昨年4月ごろはどんな状況になるか分からなかったが、結果として警察施設を使うまでの状況には至らなかった」と説明している。【町田徳丈、斎藤文太郎】
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