東京都渋谷区で路上生活をしていたとみられる住所不定、職業不詳の大林三佐子さん(64)が頭を殴られて死亡した事件で、警視庁捜査1課は21日、傷害致死の疑いで、同区笹塚2、職業不詳吉田和人容疑者(46)を逮捕した。吉田容疑者は同日未明、自宅近くの笹塚交番に母親と一緒に出頭。「私が殴った。まさか死んでしまうとは思わなかった」と容疑を認めている。
逮捕容疑では、16日午前4時ごろ、同区幡ケ谷2の甲州街道沿いのバス停で、ベンチに座っていた大林さんの頭をペットボトルなどが入ったポリ袋で1回殴り、外傷性くも膜下出血で死亡させたとされる。
同課によると、吉田容疑者は調べに「痛い思いをさせれば、女性がバス停からいなくなると思った」と供述しているという。「よく深夜に散歩をしており、バス停付近で女性を何度か見掛けていた」とも話しており、同課は女性と何らかのトラブルになった可能性があるとみている。
現場周辺の防犯カメラの解析で吉田容疑者と似た人物が写っており、同課は現場から約800メートルに住む同容疑者が事件に関与した疑いがあるとみて調べていた。
捜査関係者によると、亡くなった大林さんは広島県出身で、約3年前まで杉並区のアパートに居住。今年2月ごろまで同区のスーパーで働いていたが、春ごろから現場のバス停で寝泊まりしていたとみられる。
所持品だったカードには自身の会員制交流サイト(SNS)のアカウントや親戚の連絡先などが書かれており、捜査関係者は「路上生活という苦しい境遇になっても、社会とつながっていたかったのではないか」と話す。
◆事件当日も普段通りに 吉田容疑者
近隣住民らによると、吉田容疑者は自宅マンションの1階店舗で母親と酒店を営んでいた。母親と2人暮らしで、父親が約3年前に他界後は二人三脚で店を支えていたが、近所トラブルを起こす一面もあったという。
取引のある居酒屋の男性従業員(57)は「事件当日も普段と変わらず酒を運んでくれたので、信じられない」と驚く。吉田容疑者は母親と地域清掃のボランティアに励む真面目な性格だったという。幼い頃から家族ぐるみで付き合いがあった女性(73)も「優しい子だった。別の就職先でうまくいかず、店を手伝うようになった」と語る。
その一方で、男性従業員は「(吉田容疑者の)お父さんは生前、息子が引きこもりがちだと心配していた」とも明かす。
近所の男性(36)は「神経質そうな感じで、たびたび苦情を言われてクレーマーのようだった」。男性が引っ越してきた1年半前、吉田容疑者が男性宅を訪れ、「自宅のバルコニーから見える世界が自分の全て。景色を変えたくない」と、アンテナの設置位置を変えるよう強く求められたなどトラブルが絶えなかったという。(天田優里)
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