夫婦別姓を認めていない法律を再び「合憲」とした23日の最高裁大法廷決定は、選択的夫婦別姓導入の是非に踏み込まず、国会に議論を委ねた。識者からは「憲法の番人としての役割を果たしていない」と批判の声が上がった。 (山田雄之)
◆社会情勢の変化
「社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、2015年の最高裁大法廷判決を変更すべきだとは認められない」。最高裁決定は15年の合憲判断を維持した。
今回の最高裁決定の焦点は、15年判決後の社会情勢の変化をどう評価するかだった。
国は16年、国連の女性差別撤廃委員会から、夫婦に同姓を強いる制度を改善するよう3度目の勧告を受けた。17年の内閣府の世論調査では、選択的夫婦別姓導入を容認する割合が5年前の調査から7ポイント増え、過去最高の42.5%に。反対派の29.3%を大きく上回った。国に制度導入や議論を求める地方議会の意見書は、今月までに171件に上った。
原告はこれらの事情を踏まえ、「選択肢のない夫婦同姓を維持する合理性は既に失われている」と主張したが、最高裁は退けた。
◆合理性欠かない
「選択的夫婦別姓に合理性がないと断じたわけではない。国会で論じられ、判断されるべきだ」とも付言した前回の判決から5年半、国会で法案提出などには至っていない。それにも関わらず、最高裁は今回の決定で再び「国会で判断されること」とした。
15年の判決は「今の制度が国会の裁量を超えるほど不合理」であれば、憲法が保障する個人の尊厳と両性の本質的平等に抵触するとする一方、婚姻や家族に関する制度づくりは社会情勢などを踏まえて国会に委ねられているとしていた。
その上で夫婦別姓を認めない民法の規定を「通称使用の広がりで不利益は一定程度緩和されている」として合理性を欠くとまでは言えないと判断していた。
◆世界で日本だけ
法相の諮問機関の法制審議会が1996年に、選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を答申してから4半世紀。世界で夫婦同姓しか採用しない国は日本だけとなった。
昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画が、今後の夫婦の姓の制度について「司法の判断を踏まえる」と盛り込んだ中での今回の決定。立命館大の二宮周平教授(家族法)は「国会は司法の判断を待っていたのに、最高裁は憲法の番人としての役割を放棄した。今後の国会で制度導入に向けた議論が進展するとは思えない」と批判した。
一方、15年の最高裁判決で「違憲」とする意見を述べた元最高裁判事の桜井龍子さんは、裁判官3人が補足意見で「社会事情の変化によっては違憲と評価されることもあり得る」とした文言に注目する。「違憲判断の可能性を示唆しており、勧告的な意味合いが含まれている。国会は真摯に受け止め、議論を進めなければいけない」と話した。
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