静岡県中西部の茶農家、茶商の共同出資会社「静岡オーガニック抹茶(SOMA)」(川根本町)が昨年、国内最大級の有機抹茶加工施設を同町に構えた。近年の健康志向で海外の日本茶需要が拡大し、特に抹茶の人気は高い。同町を含む中山間地を軸に有機抹茶のグローバル産地化を図り、県茶業振興の足掛かりにしたい。
SOMAは国内外で急進する有機抹茶の大規模需要に対応するため、2018年に設立した。国の補助金を活用し、生産基盤となる加工施設を整備した。抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)はKAWANE抹茶(島田市)を中心に同市と川根本町、藤枝市の生産者組織から調達。加工施設で仕上げ、殺菌、粉砕、包装などを行う。完成した抹茶を製茶問屋のカクニ茶藤(静岡市)、丸山製茶(掛川市)が輸出する。生産者と茶商が手を組み、持続可能で安定した供給体制を整えた。
緑茶の輸出額はここ10年で約4倍に伸び、コロナ禍でも20年の輸出は額、量ともに前年を上回った。中でも抹茶、粉末茶は20年輸出額の約6割、量では約45%を占める。
昨年10月から本格的に稼働した加工施設では、年間280トンの生産を見込む。輸出は21年も好調を維持し、国内外の需要増などから、4~6月の有機碾茶の一茶価格は昨年同期比で約1・6倍になった。SOMAの杉谷道也社長は「持続可能な供給体制を構築し、生産者の意欲も高い。世界有数の有機抹茶産地形成に向けて、進捗(しんちょく)は順調」と手応えを語る。
有機茶栽培に力を入れる九州地域は、1経営体当たりの茶園面積が大きく、大型需要に対応可能な生産体制を誇る。本県の茶業はこれまで、大型需要への迅速な対応を苦手としてきたが、安定した生産体制を整えるSOMAは対応可能だ。
輸出で障壁となるのが農薬問題。相手国は残留農薬基準(MRL)を設定し、基準値は厳しい。その点、有機栽培茶は各国の基準に対応できるため、海外での引き合いに強い。SOMAは有機JAS認証を取得し、加工施設に殺菌機を備えるなど、安心安全で市場競争力のある抹茶を製造できる。
近年は、他国産の抹茶、粉末茶の生産量が増え、製造技術も向上しつつある。中山間地という有機栽培に適した土壌を生かし、SOMA、生産者、茶商が三位一体で他国産と品質面で差別化を強めていけるかが今後の鍵になりそうだ。
(島田支局・池田悠太郎)
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