今年から始まった大学入学共通テストは30日、新型コロナウイルス対策で設けられた第2日程が始まる。第1日程(16、17日)の出題内容は、英語などで実用性重視の傾向が色濃く、従来のセンター試験との違いを印象づけた。一方、入試改革の目玉とされながら導入が見送られた英語民間検定試験と国語数学の記述式は再検討が続くが、見通しは立っていない。(土門哲雄)
◆公式だけじゃダメ
「思考力、判断力、表現力を問う仕掛けをたくさん組み込んだ」「単に公式を覚えて解くだけでなく、どうやって(社会での)リアルな問題解決に役立てるかを意識させるように問題を作った」
大学入試センターの担当者はそう説明する。英語のリーディングは問題文の分量の多さが話題に。発音やアクセントの文法問題がなくなる一方、ルームメイトとのスマートフォンでのやりとりや、ミュージシャンのファンクラブサイトの内容、海外のホテルに宿泊する計画で空港からの行き方などを問う出題があり、複数の資料から読み解く問題もあった。
駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長は「知識問題としてはむしろ易しくなっているが、考えさせる問題が多くなった。英語は『使える英語』を意識した民間試験のような内容で、今の時代のニーズに沿っている」と話す。英語民間試験の共通テストへの導入については「問題点が何一つ解決しておらず、現実的に無理ではないか」とみる。
◆理念だけ独り歩き
「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問う英語民間試験と国数の記述式が見送られたのは、2019年11~12月。会場の都市部偏在や採点の不公平性などが問題視された。その後、文部科学省の有識者の検討会議では「目玉政策になった経緯が不明」「理念が肥大化し、実現可能性が度外視されたのでは」などの厳しい意見が相次いだ。
文科省が昨年7~9月に大学側を対象に行った調査でも、英語民間試験の活用に慎重な意見が目立った。「共通テストに記述式を出題すべきか」との質問には、否定的な回答が84%に上った。
◆改革議論は続く
検討会議は共通テストの結果を踏まえ、入試改革の議論を継続する。文科省は新学習指導要領で学ぶ高校1年生が24年度に受ける大学入試に向けた工程を描く。だが、入試に関する大きな変更は大学が2年前までに公表するルールがあり、さらにその1年前までに文科省が規定する必要がある。大学振興課の担当者は「今春までに検討会議で一定の方向性が示されないと間に合わない」と話す。
大学教授らでつくる「入試改革を考える会」代表の大内裕和・中京大教授(教育社会学)は「入試改革は教育産業を巻き込み、行き過ぎた商品化、市場化で受験生が振り回されてきた」と指摘。「共通テストが本当に思考力を測る試験になっているか、実用性ばかりを重視して基礎的理解をおろそかにしていないか、丁寧に検討する必要がある」と強調する。
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