年明け5日早朝、東京・豊洲市場(江東区)で新春恒例の初競りが行われた。国内だけでなく、海外からも多くの魚介が集まる豊洲で、ひときわ注目を集めるのがマグロの初競り。2年前には、すしチェ-ン「すしざんまい」を展開する喜代村の木村清社長が、青森県大間産の「1番マグロ」を3憶3360万円という史上最高値で競り落とし、大きな話題を呼んだ。新型コロナウイルスの影響が尾を引く中、今年は2084万円といった控えめな初値で幕を開けた。
2020年の初競りでの木村清社長[Photo by gettyimages]
毎年、派手なパフォーマンスで初競りマグロを超高値で競り落としている木村社長だが、豊洲の関係者からは今でも「宣伝目的」「目立ちたいだけ」といった批判的な声がやまない。築地時代には、マグロの初競りでの木村社長の動向ばかりが報道されることに危機感を覚えた仲卸の団体が、報道各社に対して要請文を出したほどだ。
しかし筆者は、木村社長の振る舞いこそが新春の豊洲、ひいては水産業界に活況をもたらしていると考える。
市場関係者も木村社長に注目
ここ数年、1月5日の初競りでは、午前5時過ぎから始まる本番を前に、マグロの卸売場に訪れる木村社長の視線に多くの市場関係者が釘付けとなっていた。張り詰めた緊張感の中、木村社長の動きが止まると、にわかにその周辺が人で埋め尽くされる。
意外と知られていないが、最高価格で落札される「1番マグロ」候補のマグロは毎年5本ある。競り人が所属する生鮮品を扱う水産卸会社は豊洲に5社あり、卸会社ごとに競りが行われるため、各社がその日もっとも高品質だと感じた1番のマグロは卸会社の数だけ存在するのだ。
5本のうち、どれがもっとも価値あるマグロなのかを評価するのは、卸売業者と飲食店を仲介する仲卸や、すしざんまいのように直接競りに参加できる「買参権」を持つ業者である。
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