パンの製造小売業界で過去最大の倒産となったベーカリーチェーン・ベルベ。「パン工房ベルベ」「ブーランジェリーベルベ」の名称で大手町やお台場など首都圏に28店舗を構え、近年も積極的に出店攻勢をかけていた同社だが、11月9日に突然の全店舗閉店と倒産を発表した。 突然の閉店を惜しむ同社のファンの声も聞かれる一方、同社の従業員への給与未払いや取引先への代金未払い、銀行への借金の未返済などがあり、利害関係者への早急な説明が求められている。しかし、同社の社長の所在は現在わからなくなっており、問題解決には時間を要する見込みだ。 この記事の写真を見る
創業48年、順風満帆にも見えた人気ベーカリーにいったい何があったのか。倒産や企業再生を専門に20年以上にわたり取材・執筆を行なう帝国データバンクの内藤修氏がレポートします。 ■手作り製法・地産地消で人気に ベルベの創業は1973年。創業者でもある社長が製パン大手の工場勤務を経て、横浜発祥の新興ベーカリー(当時)で総務課長に従事した後、8年の業界経験をもとに独立した。その後、社長は地元商工会議所の常議員を務めるなどして事業基盤を固め、従業員教育にも長年力を入れていた。
創業以来、「手作り製法にこだわり妥協しない」をモットーに、「1店舗・1工房」の体制で手間暇をかけたパンを特徴としていた。高級フランスパン・クロワッサンなどの調理パン、各種ケーキのほか、人気商品「ふみおおじさんのこんがりラスク」などの焼き菓子を販売。なかでも「スイートポテト」は主力商品のひとつだった。地産地消のコンセプトで、地元のサツマイモ「ベニアズマ」を使用した季節限定商品は人気を集めた。 毎年のように新規出店し、一定額の月商を下回る店舗は順次閉店。賃料、面積でより条件の良いテナントへの移転を進めるなど、積極的なスクラップアンドビルドを繰り返し、安定した収益を確保。コロナ禍の影響が出た2020年6月期の年売上高も過去最高となる約25億6000万円(会社公表値)を計上するなど、県内上位クラスの売上高を誇った。
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