Wednesday, August 18, 2021

ホヤも、ウニも。ヤギミルクと三陸シーフードが奏でるハーモニー/ポストベーカリー - 朝日新聞デジタル

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当たり前の話だが、牛から出た乳が牛乳で、ヤギが出す乳はヤギミルクである。それは知っていても、どんな味がするのかとんとわからない。曖昧模糊(あいまいもこ)としているだけにかえって、ヤギミルクをふんだんに使うパン屋があると聞き、俄然(がぜん)興味が湧いた。場所は三陸、岩手県宮古市である。

ホヤも、ウニも。ヤギミルクと三陸シーフードが奏でるハーモニー/ポストベーカリー
外観

昭和の香りがする商店街ゆえ、超モダンな店舗は目立ちまくっている。陳列棚もおしゃれ。そんな中、パンの名札はパワーワード連発。「ほやパン」「ほたてトースト」「塩ウニバターパン」……三陸の海の幸、豪華乱れ打ち。せっかく三陸まで来て魚介食べたい欲も芽生えていたので悪い話ではないが、こんな個性的な面々を中に入れて一体パンとして成り立つのだろうか?

と疑問形のまま、貝殻の形をした「ほたてトースト」にがぶり噛(か)みついたところ、前歯がパンの中のぷりんぷりん物体を鋭く感知した。本当にホタテ! とろけ出たベシャメルソースとの組み合わせはまるでクラムチャウダー。生地も香ばしくて、シチューに浸してパンを食べるかのように滋味深い。「成り立つのだろうか?」などと評論家ポジションに立ったところが、秒速でぎゃふんと言わされたのだった。

ほたてトースト断面
ほたてトースト断面

ホタテにすっかり意識を持っていかれていたが、ヤギミルクはどこへ? いや、このパンの至るところヤギミルクだったのである! パンの水分はヤギミルク。ベシャメルソースもヤギミルクで作ったもの。香りはやさしく、甘さは素直、やわらかな酸味とあいまって、後口もさわやか。ヤギミルクとホタテの相思相愛は感動ものだった。

さすがは、人気店「365日」「ジュウニブンベーカリー」で杉窪章匡シェフの下、現場を取り仕切っていた佐藤一平さん。この店は佐藤さんによる独立後プロデュース第1号なのである。オーナーはヤギの飼育からヤギミルクの製造まで手がける「しあわせ乳業」。だから、「蛇口をひねることはほとんどありません」と言うほど、水代わりにヤギミルクでパンを作るという贅沢三昧(ぜいたくざんまい)が可能なのである。

「塩ウニバターパン」は焼きウニで作ったウニバターをパンで巻いた塩パン。こちらはウニのクリームパスタ感覚。はじめはクリーミーで、後からじんじんとウニの風味が爆発してくる。もわーんと沈んでじゅわーと溶けるパンの食感も愉快。

塩ウニバターパン
塩ウニバターパン

そもそも、三陸シーフードオールスターズをパンに仕立てるきっかけはなんだったのだろう。

「はじめて宮古に来て、すし屋に行ったとき、ウニがめちゃめちゃおいしくて。こんなにおいしい魚介類があるんだったら、パンに入れてみんなに知ってほしい。パンっていろいろなものを発信できる媒体だと思うんです。宮古の価値あるものをパンで発信したい」

ほやパン
ほやパン

最難関は好きな人と嫌いな人が激しく分かれるホヤだろう。一体どうやってパンにする? どきどきしながら口に運ぶと……う、うまい! 加水の多いふにふにしたパンの中でぷりぷりちぎれていくホヤ。ベシャメルソースの海の中でまろやかに、癖はなく、しかしホヤならではのさわやかな苦味はある。それがヤギミルクのさわやかさと響きあい、ハーモニーを奏でるのだ。

「正直僕も苦手だったのですが(笑)、レモンなどでマリネして臭みを消して、おいしく食べられるようにしました」

さて、店から約20分ぐらい車を走らせた山の中。道無き道を行くと突然出会った、白くてふさふさでのんびりともぐもぐしている集団は……ヤギだ! 断崖絶壁に暮らすのが習性のヤギは、斜面もなんのその、旺盛な食欲で木の枝から草から食べまくり、自ら開墾(かいこん)する。なだらかな丘の牧草地は必要ない。平野が少なく山ばかりの日本に合った、未来形の酪農ではないか。

ヤギの群れ
ヤギの群れ

しあわせ乳業の鞠古武士(まりこたけし)さんは言う。「最初はこの牧場にヤギは3頭だけでした。たまたまミルクを飲んでみたら、ぜんぜん臭みがなくてすごくおいしくて。それからヤギの飼育を本格的にはじめました」

昼間はずっと放牧、穀物飼料は与えず、牧草やビールの搾りかすなど国産のものだけを食べて健康的に育つ。おいしいミルクができるはずである。

しあわせ乳業の鞠古武士さんとプロデューサーの佐藤一平さん
しあわせ乳業の鞠古武士さん(左)とプロデューサーの佐藤一平さん(右)

宮古にある海の幸、山のミルク、そして宮古の若者にパン作りを教えて、東京の一流店のようなクオリティーで宮古のパンを作りだした佐藤さん。これから47都道府県すべてでパン屋をプロデュースし、地方のよいもの、才能ある若手職人を発信・発掘していきたいというでっかい野望を持つ。パンは地域活性にどれだけ役立てるのか? これから佐藤さんがパンの力を見せつけてくれるだろう。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)
「このパンがすごい!」紹介店舗マップ(店舗情報は記事公開時のものです)

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