「苦しい評議でしたが、無期懲役としました。生涯をかけて償ってほしいというのが裁判所が出した結論です」。判決言い渡し後、家令和典裁判長の胸の内を明かすかのような説諭にも、久保木被告の表情が変わることはなかった。
グレーのスーツにめがね姿で入廷した久保木被告。午後1時半すぎに開廷すると、家令裁判長は、10月22日の論告求刑公判の際に「静粛な環境で聞いてもらうため」として告げていた通り、主文を後回しにして判決理由の朗読から言い渡しを始めた。「身勝手極まりない」「生命軽視の度合いも強い」。厳しい指摘が続く中、久保木被告は証言台の前のいすに腰掛け、両膝に手を置き、真っすぐに前を見つめた。時折、マスクを触るしぐさを見せたが、背筋を伸ばしたまま、じっと耳を傾けていた。
開廷から約35分後。「被告人を無期懲役に処する」と言い渡された。久保木被告は微動だにしなかった。家令裁判長から判決の内容を理解したかと問われると、久保木被告は正面を見ながら「はい」。小さな声が静かな法廷内に響いた。(丸山耀平)
◆裁判員「葛藤や苦悩あった」 責任能力の判断に難しさ
裁判員を務めた20代男性と、20代の男子学生が判決後に記者会見した。検察側が死刑を求刑した裁判の判決を考える立場になり、男子学生は「葛藤や苦悩はあり、そういうことを真剣に考える機会は初めてだった」と明かし、「当初は参加するかすごく迷ったが、とても良い経験になった」と振り返った。
20代男性は「最初から前向きに取り組んでいた。やって良かった」。判断が難しかった点について、2人は、被告の責任能力について考えた点を挙げた。
検察側は10月1日の初公判の際の冒頭陳述で起訴内容とは別に、被告が入院患者に投与予定の点滴への消毒液の混入を繰り返していたと指摘したが、その後の公判で被告は「お話ししたくありません」と述べ、詳細は明らかにならなかった。判決への影響について、2人は「判決文に書かれた通り」と答えるにとどめた。(神谷円香)
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