横浜市の旧大口病院で患者3人を殺害したとして殺人罪などに問われた元看護師の久保木
公判で久保木被告は起訴内容を認め、責任能力の程度が最大の争点となった。検察側は起訴前に行った精神鑑定を基に完全責任能力があったとして死刑を求めた一方、弁護側は起訴後に裁判所が行った別の精神科医による鑑定を基に、被告は心神耗弱であり無期懲役が相当と反論していた。
家令和典裁判長は判決理由で「対人関係の対応力に難がある」「問題解決の視野が狭く自己中心的」などの点から「自閉スペクトラム症(ASD)の特性」があり、うつ状態でもあったとした。しかし、看護師の仕事をできており、うつ病とまでは言えず、統合失調症の特有の症状もなくその他の「精神障害はない」と認定した。
自分が対応しなくても良い時間帯に被害者を死亡させるための犯行手段を選んでおり、善悪を判断する能力や行動を制御する能力は著しく減退していなかったと判断し、完全責任能力を認めた。
◆3人以上殺害は「原則死刑」だが…
それでも、判決が、死刑ではなく、無期懲役を選んだのはなぜか—。
死刑と無期懲役を分けるポイントについて、動機や殺害方法の残虐性など9項目を挙げた最高裁の「永山基準」がある。最高裁の司法研修所が2012年にまとめた研究報告によると、09年までの30年間に死刑か無期が確定した殺人・強盗殺人事件346件を分析し、「最も大きな要素は被害者数」と結論づけている。
元東京高裁部総括判事の三好幹夫弁護士は「3人以上殺害された事件では特殊事情がなければ、死刑を原則に考える」と明かす。
今回の特殊事情として三好弁護士が注目するのは、判決の「動機形成過程には、被告の努力ではいかんともし難い事情が色濃く影響しており、酌むべき事情と言える」という部分。被告の精神状態だ。
判決は、被告はASDの特性から臨機応変な対応が苦手な中、採用時の説明と異なり延命措置をしなければならず、ストレスをため込み、うつ状態となったが、仕事を続けた結果、「視野
三好弁護士は、正当防衛の認定を例に挙げ、「認定するための要件は満たさなくても、正当防衛に近い事情があれば量刑判断の際に考慮することがある」と説明。「今回の犯行自体は計画的で緻密に行っており、完全責任能力は認められる。しかし、精神障害とは言えないとしても、心神耗弱に近い精神状態だったと判断し、死刑にしなければならないとまでは言えないと判断したのではないか」と話した。
永山基準 1968年に起きた4人連続射殺事件の永山則夫元死刑囚(犯行当時19歳、97年執行)に対する83年の最高裁判決が示した死刑の適用基準。①犯行の罪質②動機③事件の態様、特に殺害方法の
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