Monday, May 24, 2021

ラベルを貼れば「エコ」?混沌を極めるオランダの乳製品市場 - Newsweekjapan

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(筆者の友人Robin Willemsen撮影 実家の乳牛たち)

オランダに留学し、一人暮らしを始めてから、スーパーで買い物する機会が増えた。日本ではあまり使われていないのか、はたまた私が注意を払っていなかっただけなのかわからないけれど、オランダには沢山の「エコラベル」が食品に貼られていることに気が付いた。

前半ではそれぞれの認証制度を紹介し、後半(2ページ目)では色々な制度について調べて私が感じたことを綴る。なお、今回紹介するのはオランダの乳製品市場で出回るラベル(の一部)だが、青果・チョコ・茶・美容品など他の製品にも沢山のラベルがある。気になる方がいたら後ほど紹介しようと思う。

今回紹介した認証制度は、サイトの一覧を記事の終わりに載せておいた。

安定、王道 EUの法律に基づいたオーガニックと、オーガニック市場を盛り上げるEKO認証

EU欧州連合のオーガニックに関する法律は、主に生産の技術・資材について定めている。これに基づいて生産された農作物や加工品は、EUオーガニックロゴで記される。

対してEKO認証はオランダ独自のもので、EUオーガニックよりも高い基準だ。取り組み例として、買い手へのコミュニケーションや輪作・ヨーロッパで栽培された飼料の使用等がある。生産技術を規制するだけでなく、オーガニック市場全体を盛り上げようとしている印象を受ける。

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(筆者撮影 2021年5月 EKOとGoed voor natuur en boerenlandvogelsのロゴが付いた牛乳(左)とDemeterのロゴが付いた牛乳(右))

オランダではSkal-Biocontroleという機関がオーガニック認証を、Skal認証を受けた団体Stichting EKOがEKO認証を管轄している。これら二つの認証制度の違いは前回の記事で詳しく解説した。

農業の女神に見守られる認証制度

オーガニックを超え、最高峰の基準とも言われている認証制度、その名もDemeter。彼女はギリシャ神話に登場する農業の女神である。Demeterマークの付いた商品は、「バイオダイナミック農法」の信念に沿って生産されている。営農と自然に対して包括的なアプローチをし、農場が一つの完結した(閉鎖的な)生命体であることを目指す。

一生命体としての農場には動物が不可欠だ、という考えがバイオダイナミック農法にはある。従って、畜産業に関する制度にしては珍しく、単位面積当たりの家畜の数の最低基準を設けている。家畜が植物を食べ、その糞尿が土にかえることで閉鎖的な循環を完結させることができると考えるからだ。もちろん家畜の数の上限もあり、その放牧地が自力で養える(牧草を供給できる)こととされている。

酪農家では飼料の最低6割は自給もしくは別の農家と協力して飼料と糞尿を交換すること、また飼料の最低7割はDemeter認証(残り最大3割はオーガニック)にすること。その他にも、除角や遺伝子組み換えの禁止・群れに牡牛を一頭含むことの推奨などがある。

ただ単に商品を売るだけに、基準の抜け穴を見つけてDemeterブランドのいいとこどりをすることを避けなければいけない、と手引きにハッキリ記されている。それだけ信念が大切にされているということだろう。

Demeter認証は1999年に始まった。国際機関が最低基準を設定し、各国の機関が同等かそれを上回る基準を定めるている。

動物福祉団体による三ツ星☆☆☆Beter Leven

De Dierenbescherming(動物保護)というオランダの団体が管理しているBeter Leven(より良い生活)乳製品の他にも、肉や卵製品に適応される。遺伝子組み換えの飼料の禁止・水質管理・抗生物質投与の制限・牛舎の大きさなど、主に動物の健康や福祉に関する基準を設けている。

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(筆者撮影 2021年5月 Beter Leven一つ星の卵)

一つ星から三ツ星まで段階的な認定制度で、慣行農法では一つ星さえ得られない。EUオーガニック認定を受けた製品はBeter Leven三ツ星に該当するが、動物福祉においてはBeter Levenの基準の方が高い場合もある。例えば、Beter Levenの三ツ星では放牧の基準は年間180日・一日8時間だが、オーガニック及びEKOでは120日・6時間だけで良い。

野鳥保護団体がGoed voor natuur en boerenlandvogels

「自然と農地の鳥にやさしい」認証が始まったのは2017年の3月。25の酪農家で構成され、Demeter認証を受けているZuiver Zuivelという乳製品生産団体が、Vogelbescherming Nederland(オランダ・鳥類保護団体)に提案して共同開発した制度である。

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(筆者撮影 2021年5月 Goed voor natuur en boerenlandvogelsのロゴが付いた牛乳。オーガニックスーパーEkoplazaで発見)

「Een stap verder dan biologische」(オーガニックよりも一歩先)というスローガンを掲げている。オーガニックは最低条件ということだろう。取り組みとしては、イネ科の草以外の草も放牧地に生やすこと、6月中旬まで草を刈らないこと、などがある。

放牧 Weidemelk

最低で年間120日、一日に6時間(もしくは合計で年間720時間)放牧地に乳牛を放つことが条件。Stichting Weidegang(放牧機構)が管轄している制度で、2007年に始まった。

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(筆者撮影 2020年5月 Weidemelkのロゴが付いたクリーム。一年前のデザインであるため、次の写真と少し違う)

この放牧の最低基準は、EKO認証・On the way to PlanetProof・Beter Levenなど他の制度でも定められているため、Weidemelkは他の認証の一部を切り取ったものという認識で良いだろう。

オランダ生まれ・世界最大級の酪農協同組合が考案した「地球保証への道」

On the way to PlanetProof(地球保証の道)は、2015年から野菜・果物バージョンが存在した。その乳製品版は、オランダの酪農協同組合FrieslandCampina(フリースランドカンピーナ)がStichting Milieu Keur(環境保証機構)に提案して作られ、2018年に適応されるようになった。

動物・生物多様性・環境という3つの柱から成り立っていて、それぞれに最低基準・一般基準・最高基準が設けられている。最低基準を満たすのは酪農家の75%、一般基準を満たすのは50%、3つの柱のうち最低一つで最高基準を満たすのは10%。つまりオランダの酪農家の10%がこの認証を得ることができるらしい。例を挙げると、

一般基準→グリフォサートを使用しないこと・再生可能エネルギーの使用・牛のブラシの設置
最高基準→タンパク質源の自給・自然景観の保護・健康モニタリング。

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(筆者撮影 2021年5月 On the way to PlanetProofとWeidemelkのロゴが付いたFrieslandCampina社のヨーグルト)

ドキュメンタリー番組でのインタビューによると、On the way to PlanetProofの基準はより多くの酪農家の手が届くように緩めに設定されているらしい。あまりに高すぎると、農家のやる気が出なかったり、参加する人が少なく意味がなくなったりするためだという。

国内大手スーパーマーケット独自のBeter voor Koe, Natuur en Boer

Albert Heijnというスーパーの自社ブランドの商品に付けられるマーク、Beter voor Koe, Natuur en Boer(牛・自然・農家に良い)。2017年に導入された。

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(筆者撮影 2021年5月 Albert Heijn自社ブランドのヨーグルトに)

名前の通り3つの柱(動物・自然・農家)に基づいていて、取り組みとしては例えば動物→放牧 放牧地の牛密度の上限(1ヘクタール当たり2.5頭) 自然→昆虫ホテルの設置 遺伝子組み換え飼料を使わない 抗生物質を予防目的で使わない など

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