広島は6日、米国による1945年8月の原爆投下から76回目の「原爆の日」を迎え、平和記念公園(広島市中区)で平和記念式典が開かれた。広島市の松井一実市長は平和宣言で、1月に発効した核兵器禁止条約(核禁条約)の批准を日本政府に求め、核保有国に対しては条約を機能させるために議論に加わるよう促した。首相就任後初めて参列した菅義偉首相は条約についての言及を避けた。
式典は新型コロナウイルス感染拡大を受け、前年同様、参列者を例年の1割程度にとどめるなど規模を縮小。約780人が出席した。中国とパキスタンを除く核保有国を含む83カ国と欧州連合(EU)の代表者らが参列した。原爆が投下された午前8時15分に合わせ、1分間の黙とうをささげた。
松井市長は宣言で、被爆後に女児を産んだ女性の手記から「原爆の恐ろしさが分かってくると、その影響を思い、我が身よりも子供への思いがいっぱいで、悩み、心の苦しみへと変わっていった」と引用。被爆者が国際社会を突き動かし「核兵器禁止条約の発効という形で結実した」と功績をたたえた。
核禁条約に参加していない核保有国や同盟国などの為政者に転換を促すため、市民社会側が「核兵器は不要」との総意を形成するよう訴えた。また、政府には条約の締約国となり、締約国会議への参加を求めた。原爆投下直後に降った「黒い雨」の被害者の早期救済も要請した。
菅首相は式典のあいさつで、核軍縮の進め方について「さまざまな立場の国々の間を橋渡ししながら、現実的な取り組みを粘り強く進めていく必要がある」と従来の政府の立場を述べ、核禁条約には触れなかった。「黒い雨訴訟」で上告を断念した政治判断にも言及し、ほかの被害者についても救済を早急に検討するとした。
国連のグテレス事務総長のビデオメッセージも流された。グテレス氏は「破滅のリスクを減らすための歓迎されるべき第一歩」と米露の新戦略兵器削減条約(新START)の延長は評価した一方で「核兵器の近代化を進め、新たな核軍拡競争を引き起こした」と核保有国を批判し、核廃絶への取り組みを促した。
広島市の小学生から選ばれたこども代表、市立袋町小6年の伊藤まりあさん(12)と市立五日市東小6年、宅味義将さん(11)は「本当の別れは会えなくなることではなく、忘れてしまうこと。私たちは犠牲になられた方々を決して忘れてはいけないのです。悲惨な過去を繰り返してはいけないのです」と訴えた。
松井市長と遺族代表は、この1年間で死亡が確認された4800人の名前を記した原爆死没者名簿を原爆慰霊碑下の奉安箱に納めた。名簿121冊の記載人数は計32万8929人となった。厚生労働省によると「被爆者健康手帳」を持つ人は3月末で12万7755人。平均年齢は83・94歳に達している。【賀有勇】
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