Tuesday, March 16, 2021

ベーカリー「なんすかぱんすか」などを手掛けるSourceが原宿に四畳半の小さな酒場「SCOO(スクー)」を開業。クラフトビールを看板に、界隈の寄り道的な場所を目指す - フードスタジアム フードスタジアム - フードスタジアム

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「パンとエスプレッソと」「arcana izu」はじめ数多くのヒット作を送り出し、ゼロからイチを繰り返す

JR原宿駅から竹下通り、明治通りを越え、喧騒から少し離れた神宮前二丁目。界隈の路面には飲食店や洋服店、雑貨店など様々な店舗が軒を連ねるが、「SCOO」は雑居ビル1階の奥まった通路沿いにひっそりと立地し、隠れ家的な風情を醸し出している。

「SCOO」を運営するSource(東京都港区)代表の田端知明氏は、大阪でベンチャー企業の立ち上げから株式上場までの経験を持つ。当時、不動産事業を数多く手掛ける中で飲食物件の入れ替わりが激しいことに気づき、その要因を考えるようになった。「決して味が悪いわけではない。店主の人当たりだって良い。ただ、金勘定をできないから店を畳むことになる。どうにかできないかなと思って」と、田端氏。そこで様々なプロフェッショナルの会社と手を組み、「チャレンジ・キッチン」という企画で独立を目指す料理人を公募。彼らの活躍の場を作るという独立支援を始めた。今から15年ほど前の話だ。「フレンチ、イタリアン、和食の3人の料理人をそれぞれ支援したのですが、みなさん、しっかりと経営のノウハウを身に着けて、今も店舗を続けています。中にはオープンからずっとミシュランで星を取り続けているシェフもいます」と、語る。

その後、自身は東京へ。表参道のベーカリーカフェ「パンとエスプレッソと」を立ち上げ、代官山の「フツウニフルウツ」、静岡・伊豆のオーベルジュ「arcana izu」などを手掛けて、軌道に乗ったところで店主に経営を譲り渡すといった独立支援も継続している。「10年20年と修行してようやく自分の城を持つ。そういった従来の飲食店像では経営を学ぶことは難しいんです。そうじゃなくて、店に立つ人が何をやりたいか。ただし、やりたいことをするためには不得意なことも出てくる。この『やりたいこと』と『不得意なこと』を明確にするのが大事なんです。そうすればあとは、クリティカルな問題にも対応しながら、情熱を継続するために考え続けるだけです。私はいつも社員には『早く自立してくださいね』と伝えています。仕事は手段より目的が大事なんで」と、田端氏は語る。

コロナ禍で苦境になっていたブルワリーの話を知り、新店オープンに動き始める

田端氏が「社員がやりたいことをやれる場をつくる」という方針を守りながら事業を推進する最中、世間は新型コロナウイルスの話題で持ちきりになった。そんな折、田端氏はブルワリーを運営している知人から「卸の量が激減した」と聞かされる。「どうにか手立てはないものか」と思案するなか、ちょうど手ごろな空き区画を見つけ、クラフトビールの酒場の開業を思い立った。そこで、SNSで店主を公募したところ、その日のうちに応募してきたのが尾作友里恵氏だった。

自身も独立志向があった尾作氏は、西国分寺・三鷹のコーヒー豆専門店「珈琲や」に勤めていたが、クラフトビールにも興味を持っていた。そんなタイミングで今回の店主公募の情報をキャッチし、即座に応募をしたわけだ。田端氏との面接の末、採用された尾作氏はすぐさまブルワリーへ修行に赴き、醸造の知識を習得。その後も、社内スタッフの知人であるクラフトビール専門家と日本全国のビアパブを巡って知見を広めつつ、ブルワリーとの繋がりも作っていった。その間、田端氏は外装、内装、設備といった店舗づくりに専念。2021年1月8日、「SCOO」はオープンした。

IPAを中心に日本全国のクラフトビールを樽替わりで。日本酒やコーヒーも取り揃える

店舗のメニュー構成は、全て尾作氏が担当。看板となるクラフトビールは、全国津々浦々40軒以上ものブルワリーと取引し、樽替わりで5種を提供。そのうち1種は必ず、宮城県気仙沼市のBLACK TIDE BREWINGから仕入れたものである。取材時は、岐阜県CAMADO BREWERYの「Kan&Co.IPA」や千葉県BEER BRAIN BREWERYの「Golden Green」、三重県伊勢角屋麦酒の「DDH Citra Hazy IPA」といった、ホップの香りが強く飲みごたえのあるIPAを中心に揃え、価格はハーフ850円~、パイント1150円~。また、「七賢」(650円)や「玉川」(800円)といった日本酒も、尾作氏がセレクトした純米酒を日替わりで3種提供。一方、ウイスキーは「タリスカー」(900円、ハイボールは1000円)の1種のみ。「ウイスキーを出したいと思いつつ、そこまで知識がなかった私が知っていて、なおかつ好きな味わいのウイスキーがタリスカーだったんです」と、尾作氏は笑う。また、尾作氏の得意分野であるコーヒー(500円、アイスは600円)も提供。前職の「珈琲や」へ赴き、自ら豆のセレクトと焙煎をしている。甘みと酸味が華やかな「Papua New Guinea」と、コクと苦みの強い「Honduras」といったように、香りや味わいの異なる2種をこれまた日替わりで用意する。

つまみは、系列店の「COURTESY@溜池山王」のシェフに尾作氏のイメージを伝え、「SCOO」オリジナルのレシピを考案してもらっている。「SCOOのポテサラ」(600円)や「フエちゃんとサラミくん」(550円)、「ポルペッティーニ」(300円~)、「ペペロンカルボナーラ」(600円)といった、ネーミングもユニークなつまみが品書きに並ぶ。また、近隣の系列店「なんすかぱんすか」から届いた夜パンを提供することもある。

店舗オリジナルのクラフトビール醸造も視野に。「やりたいこと」ベースで突き進む!

店舗の客層は近隣の住民が中心で、一人客が多い印象だ。「クラフトビールやコーヒーなどが看板ではありますが、お客様には何よりこの空間を楽しんでもらいたいですね」と、尾作氏。場に居合わせたお客同士で会話が盛り上がり、意気投合して常連になる人も多いという。

新型コロナウイルスの影響で苦しい状況に立たされている飲食業界ではあるが、その状況を田端氏は「それでも、最悪ではない。」と語る。「今という状況は、それはそれで割り切って、次のきっかけを作るためにやるべきことをやるのが必要なのではないでしょうか。僕はそもそも、どんな仕事もすべて『やってよかった』と思っています。この感覚は言葉では説明できないから、やりたいことをやっている社員にお客様と通じ合っている瞬間を体験してもらうしかないと思っています」。

そんな田端氏と尾作氏。「自分たちでクラフトビールを作って、店で出す」という妄想を頼りに着々と動き出しているという。四畳半の小さな酒場に潜む底知れぬバイタリティは、きっと訪れる人々を元気づけてくれることだろう。

(取材=高橋 健太)

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