潤沢な資金、目立つ強硬姿勢
12億9000万円。オウム真理教の後継団体が、2019年10月末時点で公安調査庁に報告した資産(現金、預貯金、貸付金)の総額だ。年々肥大化する組織。平成の歴史に刻まれた戦後まれに見る凶悪事件は、首謀者らの死刑執行で決着が付いたと思われたが、果たしてそうなのか。平成とともに過ぎ去ったはずの悪夢が、令和によみがえる恐れはないのか。(作家・ジャーナリスト 青沼陽一郎)
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オウム真理教は26年前の1995年3月20日に、死者14人、負傷者6000人以上に及ぶ地下鉄サリン事件を引き起こした。その2日後には警視庁が教団関連施設への一斉強制捜査に着手。松本サリン事件や坂本弁護士一家殺害事件など、数々の犯罪が白日の下にさらされることになった。
教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)をはじめ信者192人が逮捕、起訴され、190人が有罪に。教祖を含めた13人の死刑判決が確定し、平成の時代も終わろうという2018年7月、全員の死刑が執行されている。
教団そのものは1996年に破産。現在は、その後継団体として麻原への絶対的帰依を強調する主流派の「Aleph(アレフ)」と、事件当時の教団のスポークスマンだった上祐史浩が率いる「ひかりの輪」、それに主流派と一定の距離を置き独自の活動を続ける「山田らの集団」に分かれ、この三つは「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」(団体規制法)による公安調査庁の観察処分の対象になっている。3団体の構成員は約1650人、ロシアにも約130人が存在するとされる。
その3組織の資産は約13億円に上り、ほとんどをアレフが占める。しかも、信者のイベント参加費や布施などで、10年ほど前から毎年のように増え続け、2019年までの5年間で約5億円も増えた。
ところが、事件の被害者・遺族に対する賠償金は例年1億円にも及ばず、しかも2017年7月に2500万円が支払われたのを最後に、そこからアレフは賠償金を支払わなくなった。
それどころか、公安調査庁によると、2020年2月の報告以降、資産に関して正確に報告せず、度重なる補正の指導にも一切応じなかったという。それまでの態度を変えたことになる。
かつて教団内でサリンの生成に成功し、無差別テロ事件を引き起こせたのも、それだけの研究設備と薬品を買いそろえるだけの潤沢な資金があったからだ。ロシアで自動小銃を買って日本に持ち込んだこともあった。
被害賠償をめぐっては、2009年に教団の破産管財人から「オウム真理教犯罪被害者支援機構」へと債権が譲渡され、同機構は2018年にアレフに対して未払い賠償金の支払いを求めて東京地裁に提訴。2019年に約10億円の支払いを命じる判決が言い渡されている。アレフは判決を不服として控訴、上告して争ってきたが、2020年11月、最高裁はアレフの上告を棄却し支払い命令が確定した。同機構は2回の強制執行で合計4311万9018円を回収しているが、アレフは積極的に弁済に応じようとはしない。
さらには、団体規制法に基づく公安調査庁の立入検査では、「アレフ」も「ひかりの輪」も検査官の質問を構成員が無視したり、「答える義務はない」「見ての通り」とだけ答えたりするなど、非協力的な姿勢を見せているとされる。こうしたここ数年の強硬姿勢は、かつての教団を彷彿(ほうふつ)とさせる。
公安調査庁ばかりでなく、警察庁警備局が毎年刊行している『治安の回顧と展望』においても、ここ数年はアレフを「松本への絶対的帰依を強調して『原点回帰』路線を徹底している」と明示。「無差別大量殺人を再び起こさせない」との立場から取り締まりを進める、と記している。
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