蔵の町として知られる川越市に小麦畑がある。町自慢のパン用小麦が「ハナマンテン」。川越のベーカリーがこの小麦を使い、おいしいパンを焼いている。
人気のスポット「菓子屋横丁」にある「川越ベーカリー楽楽」が作るのは「彩の国地粉食パン」。ハナマンテンと北海道産小麦をブレンドし、「ふわり」と「もっちり」を理想的に共存させた「ふわもち」を実現。
この上なく萌える、色とりどりの断面/サンドイッチパーラー楽楽
楽楽の向かいにオープンさせた「サンドイッチパーラー楽楽」で、この食パンをサンドにしている。色とりどり、たっぷり具をはさんで萌える断面であることこのうえない。
「たまごサンド」はこぼれ落ちるほどにふわふわ卵サラダとゆで卵をはさむ。「三元豚のおろしポン酢カツ」は脂とろけじゅるじゅるぎらぎらな三元豚をおろしポン酢でさっぱり食べさせる。「彩の国地粉食パン」なら、厚めでも難なく歯切れるので、具だくさんサンドにうってつけなのだ。
「リュスティック」の濃厚な焼き色/リュネット
「リュネット」の若松大輔シェフは、以前もこの連載に登場したことがある。パンにするのがむずかしいと言われる「ハナマンテン」を見事に操り、思いのままにパンを作ることができる。
「リュスティック」の濃厚な焼き色。皮にはしょうゆを焦がしたような旨味(うまみ)とスパイシーさがある。中身はソフトに沈み、なすがまま歯の動きに翻弄されちぎれていく。口溶けもクリーミー。
ハナマンテンの扉を開く鍵は、小麦と水をひと晩合わせて熟成をとる「オートリーズ」という工程。これによって、ハナマンテンがじゅうぶんに水を吸い、やわらかくて、甘み成分がたっぷり生成される。
本格派「ハナマンテン100%のバゲット」/ベーカリークレープ
扉を開いたパン職人が、この街にもう1人。「ベーカリークレープ」2代目・野口健シェフ。昔ながらの町のパン屋に置かれた本格派が「ハナマンテン100%のバゲット」。皮はまるでコーンフレークのように甘く、中身はでんぷん質の香りが濃厚に漂う。
「ハナマンテン100%のリュスティック」の皮は、しょうゆの香りに旨味や甘さまで加え、まるですき焼きのようだ。
野口健シェフも「オートリーズ」でハナマンテンのよさを引き出す。
「この小麦は、いろんな表情を見せる。あ、失敗した、と思ったら、意外においしいのができたり。お客さんもついてきました。地元の小麦でパンを作れるの、幸せですよ」
ハナマンテンの主産地「原農場」を襲った台風19号
川越を悲劇が襲った。台風19号によって越辺川(おっぺがわ)の堤防が決壊、入居者120人が特養老人ホーム「キングスガーデン」に取り残されたことは、ニュースで何度も伝えられた。そして、そのすぐ近くには、埼玉県産ハナマンテンの主産地である「原農場」があったのだ。
10月12日、関東地方に大型の台風19号が上陸した日、原伸一さんは、川に流れなかった雨水が逆流してきて畑や道路が冠水していくのをなす術もなく見守った。
翌朝防災無線で、越辺川が決壊したことを知る。決壊地点からほど近い、原農場の作業所にたどりついたのはやっと水が引いた3日後のこと。内部のひどい光景を見て、言葉を失った。
「ヘドロがすごかった。まるで雪のように降り積もっていました」
作業所は180cmの泥水に襲われ、小麦の乾燥機械やトラクター、収穫した米が失われてしまった。
「父親の代から50年以上かけてじょじょに積み上げたものが、いっぺんになくなった」
20ha(東京ドーム4個分)という広大な田畑が冠水。ゴミの片付けなど、やることはあまりに膨大で、途方に暮れていた。そこに訪れたのが、多くのボランティアだ。
「とっかえひっかえいろんな人が来て、作業を明るく一生懸命やってくれました。こっちも『みなさんやってるんだから踏ん張んなきゃ』って思いますよね。日に日にどんどんきれいになる。気持ちも上がる。前向きになれますし、精神的に大きいですよね」
12月22日、夜中の0時までかかって種まきを終えた。目標より3週間も遅く、収量の低下が心配されるが、幸い今年の冬は平年よりあたたかく、遅れを取り戻せそうだという。
原さんのことを心配した川越のパン屋さんたちが店頭で募金を行い、多くの人がそれに応じた。小麦を作ってくれた原さんへの感謝と、これからも地元の小麦で作るおいしいパンを変わらず食べたいという川越の人たちの気持ちである。来年6月、冠水した畑に、たくさんの小麦が実ることをみんなが待っている。
「がんばっていいもん作んなきゃってつくづく思います。待ってる人がいるっていうのはありがたいし、勇気づけられるし、責任を感じます」
川越を襲った悲劇は、町の人たちの絆を深めているようだ。
川越ベーカリー 楽楽
埼玉県川越市元町2-10-13
049-257-7200
8:00~17:00(土日祝は7:30~17:00。売切れ次第閉店)
不定休
http://www.bakery-rakuraku.com
リュネット
埼玉県川越市砂新田2-8-11
049-292-9653
9:00~18:00
月曜休み(ほかに不定休あり。ホームページで確認)
http://www.boulanger-lunettes.com/index.php
ベーカリークレープ
埼玉県川越市大字砂931-7
049-244-7045
6:00~20:00
日曜祝日休み
https://www.facebook.com/pages/category/Grocery-Store/ベーカリークレープ-238289823028694/
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December 27, 2019 at 08:57AM
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地産小麦「ハナマンテン」が結ぶ川越ベーカリーの絆/川越ベーカリー楽楽・リュネット・ベーカリークレープ - 朝日新聞社
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