地域の商店街を人が集う拠点にしようと、「まちづくりするパン屋」をうたう。相鉄線上星川駅前(横浜市保土ケ谷区)の商店街に根を下ろして五年目。昨年から商店街組合の役員も務める。二号店を出した星川駅(同区)近くの商店による組合の結成にも関わり、今年四月に副会長に就任。「今やっていることが半年後に成果になる。地域とじっくり交流を深めていくのが大切だ」と語る。
横浜市瀬谷区で育った。幼少期、母親の趣味がお菓子作りで、スイートポテトが「家庭の味」だった。その姿に影響されたのか、「ケーキ屋になりたい」と高校卒業後に東京製菓学校で洋菓子を専攻した。修了後、同市泉区のケーキ店に入り、五年目からパン部門を担当。一人で仕込みから成形、焼成をこなすうち、「パン作りにはまった。何より、生地が気持ちいい」とパン屋を目指すことに。三十代半ばで退社し、アルバイトとして大手のパン屋に入り直した。
二〇一六年、上星川で若手有志がパン屋の誘致活動をしていることを妻を介して知った。上星川を歩いた第一印象は「人が少ない」。有志たちから「パン屋があれば人が集まる。パン屋が成功すれば別の店も来る」と熱弁され、出店を決めた。「責任は重大。でも、大丈夫だろうと楽観的だった」と振り返る。
出店先は新築ビルの一階で、屋上には人が集うデッキがある。屋上では区内の農家が出品するマルシェが定期的に開かれ、自身も参加する。魚卵製品などを販売する「横浜たにや ぎょらん工房」と連携し、同社のめんたいこを使った「明太チーズ塩パン」は看板商品の一つになった。近くにある横浜国立大との商品共同開発も進んでいる。
二〇年十一月に二号店を開設したほか、今年一月には相鉄線和田町駅前にパンの自動販売機を設置し、特別車両を使った移動販売も開始した。「パンそのもので地域を盛り上げるというより、パンを食べながら会話をするとか、パンを媒介にして地域住民や訪問者の交流を活性化していく」と狙いを語る。
店の経営に加え、上星川の有志で各地に遠征している「スリッパ卓球」の運営にも携わり、多忙を極める。「それぞれの商店街に価値はある。横のつながりをどう築くかだ」。地域に根差したパン屋として「地域の名物も作りたい」と目標を語った。(志村彰太)
<バニヤンツリーベーカリー> 2018年4月オープン。火曜〜土曜午前10時〜午後6時半に営業。店名は挿し木でも根を張り、強く大きく育つバニヤンの木にちなむ。相鉄線和田町駅近くに設置したパンの自動販売機では、前日に店で売れ残ったパンをお得なセットにして販売し、持続可能な開発目標(SDGs)を意識した。コロナ禍で、対面でない点も人気だという。
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