新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、自治体に混乱が広がっている。
実施を急いだ政府が、ワクチンの供給と自治体側の需要のバランスを見誤ったことが原因だ。市区町村と連携を強化し、態勢を立て直さなければならない。
希望する国民分のワクチンは9月末までに届き、絶対数は確保されるという。だが、自治体の接種能力が上がり、現時点では、米ファイザー社製の供給量が需要に追いつかなくなっている。
米モデルナ社製も企業や大学からの申し込みが殺到し、自治体の大規模接種分は希望の半分しか認められていない。6月末までの供給量は当初見通しより大幅に少なかったが、政府は最近まで公表していなかった。
自治体は接種予約のキャンセルや受け付けの一時停止に追い込まれている。接種を迅速に進めたところほどワクチン不足が顕著だ。
これまで自治体は、菅義偉首相が打ち出した「1日100万回」の目標達成に向け、政府から発破をかけられてきた。苦労して医療従事者や会場を確保したにもかかわらず、ハシゴを外された形だ。
未接種のワクチン量を巡っても認識に溝がある。政府は市区町村には計4000万回分の「在庫」があると主張し、「在庫」が多い自治体への供給を8月から1割減らす方針だ。
これに対し自治体側は「余りはない」「2回目の接種分であり、在庫ではない」と反発している。
食い違いの一因は、政府の接種記録システムが十分機能していないことにある。登録に手間がかかり、接種実績がリアルタイムに反映されない。居住地以外で接種した人の情報を把握しにくいとの指摘もある。
混乱がこれ以上長引かないよう、政府は実情の把握に努め、システムの運用改善を急ぐべきだ。
政府は自治体の接種スピードに応じて供給する「調整枠」も新設する。都道府県が配分を決めるが、新たな不公平感を生まないための明確な基準が必要となる。
ワクチンを感染対策の切り札と位置付ける菅政権だが、政府内の連携は不十分だ。司令塔としての役割をきちんと果たさなければならない。
からの記事と詳細 ( 社説:ワクチン接種巡る混乱 態勢立て直しは国の責任 - 毎日新聞 )
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