日本学術会議の梶田隆章会長が29日、新会員候補6人が菅義偉首相に任命拒否された問題について記者会見を開いた。6人の任命を改めて求めた上で、学術会議に関する誤った情報が広まっているとして「私どもの活動が国民の皆様に伝わっていない。正確なデータに基づいた議論をしてもらいたい」と訴えた。
学術会議を巡っては会員の選考方法や年間約10億円の予算の使い道などについて自民党が問題視し、SNSなどでも批判の声が上がっている。任命拒否の発覚以降、菅首相や自民党の指摘に対し、学術会議が公の場で反論するのは初めて。
会見では、同席した副会長らが会員選考の流れや活動状況を説明。新会員候補者は、会員らが推薦した約1300人の中から選考委員会など多くの過程を経て、半年かけて首相に推薦する105人を決定しているが、「後任の指名」はできない仕組みだと強調した。同様の選考方式は海外の多くのアカデミー(学術機関)でも採用されているという。
会員が一部の大学や地域に偏っているとの指摘についても、2000年に69・5%だった関東地方の会員が20年に51%に、東京大の会員も05年の50人から34人(名誉教授は含まず)に減少したと反論。女性や産業界の会員を増やすよう努力しているとした。
会員には委員会の出席に応じた手当と旅費が支払われるだけで、手当は1人当たり年間約34万円、旅費は約6万円。一方で、直近の3年間で開いた委員会は2234回に上ったという。菱田公一副会長は「予算がなくなる時もあり、ボランティアワークが存在しているのも事実」と訴えた。
学術会議を巡っては自民党のプロジェクトチームが組織の設置形態などを議論し、年末までに取りまとめる予定。井上信治・科学技術担当相も学術会議に対し年末までに課題を検証、報告するよう要請しているが、梶田会長は「それが最終報告になるとは思えない」とし、年明け以降も提言機能の強化などに向けて検証を続ける意向を示した。15年に有識者会議が学術会議のあり方についてまとめた報告書を基に、改善できる点などを洗い出すという。【池田知広、柳楽未来、岩崎歩】
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