昨年、日本列島に再三上陸して甚大な被害をもたらした台風。しかし、今年は打って変わって平成20年以来の「上陸ゼロ」となりそうだ。7月に台風が一つも発生せず、8月に高気圧が日本列島の上空に張り出して台風が近づけなかったことに加え、9、10月もさまざまな「幸運」が重なったことが原因とみられている。
気象庁によると、台風の統計が残る昭和26年以降、台風の上陸数は年平均で3個程度。昨年までの直近5年間は4~6個で推移しており、今年の異例な状況が際立っている。
そもそも、今年は台風の発生自体が例年に比べて少ない。1号が発生したのは5月だが、7月は観測史上初めて発生がゼロに。その後は発生したものの、10月28日時点で例年同時期と比べて発生数が4~5個少ない18個にとどまっている。日本列島への接近数も同様に4~5個少ない7個だ。
台風を監視する気象庁アジア太平洋気象防災センターの笠原真吾予報官は「7月に発生がゼロだったのが上陸数に影響した」と解説する。
熱帯の海で多く発生する台風は、上昇気流で巻き上げられた水蒸気が積乱雲を形成しながら発達する。しかし、笠原氏によると、例年なら、台風を次々と生み出すはずのフィリピン付近で、上昇気流が起きなかったため、台風が発生しなかったという。
8月には南シナ海を中心に台風が発生し始めたが、9月上旬ごろまでは日本列島周辺の上空に高気圧が張り出していたため、台風が近づけなかった。9月上旬に日本列島に迫ろうとした9号、10号も、接近できたのは九州までだった。
秋口になると例年同様、日本上空の高気圧は南東に後退した。南西にある別の高気圧との間が開き、台風がこの「隙間」を縫って北上しやすい環境ができていた。だが、この隙間がちょうど閉じていたタイミングと台風の北上が重なったため、台風の進路が西にそれるなどした。
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