全国行脚し“隠れ名店”を自ら発掘、ベーカリー業の“不安定さ”を逆手に取った交渉術
「それまで外食ばかりだった僕が、26歳くらいの時に偶然出会ったパンがあまりに美味しくて、衝撃を受けたんです。同じように、パン屋さんのパンがこんなに美味しいことを知らない方って結構いるんじゃないかなと思ったんです。もともと地元から地方を元気にしたいという思いがあった中で、地方に美味しいパン屋さんがたくさんあることを知り、地方発だからこそ喜んでいただける商材なんじゃないかなと考えました」(パンフォーユー代表取締役・矢野健太氏/以下同)
「当初はこちらの身分は明かさずに、パンを食べさせてもらってからお声がけすることが多かったです。基準は純粋においしいと感じるかという点と、エピソードや思いをお伺いして、人に話したくなるようなお店かどうか。手に入りにくいパンを提供したいという思いから、個人経営の小規模のベーカリーさんとの提携が多いですね」
ベーカリーは1店舗経営が多く、全国に“隠れ名店”が多い業種だ。ネットやSNSでもリサーチを重ね、時には地方の秘境にある店にも足を運んだ。しかし、ベーカリーは代々受け継がれてきた歴史あるところも多く、新規事業や冷凍パンへの抵抗感が強い店は少なくなかった。
店舗ありきのベーカリーは天候や立地によって売上が左右されやすく、エリア外の商圏を広げることが難しいビジネス業態の中で、パンスクへの加入は全国にファンを増やせるメリットがある。各地で地道に交渉を重ね、現在の提携数は90店舗を突破した。
「提携のメリットについて『売上がアップします』という説明ではなく、『売上が安定する』とお伝えすることで、受け入れてくださるベーカリーさんも増えていきました。また、原料ラベルの作成や箱の提供など、可能な限りこちらで手厚くサポートさせていただいています」
“街のパン屋さん”との出会いを自宅で追体験、あえて選べない「ランダム形式」が好評
「当初は『冷凍パンってこんなに美味しいんだ!』という声を予想以上に多くいただきましたが、最近は純粋に『楽しい』というお声が増えた印象があります。実際にパン屋さんに訪れた時の、ドアを開けた瞬間のワクワク感を自宅でも味わえるように、商品をランダムでお届けしているのですが、意外にもその思いに共感してくれる方が多くいらっしゃるというのは新たな発見でした」
「80、90年代に大手パンメーカーさんが台頭してきたことにより、街のベーカリーさんが価格競争に晒されて苦戦したという経緯から、00年代からは嗜好品としての独自路線でパンを作り始めるようになりました。その中で、特に高級食パンがしっかり“パンって高くてもおいしい”という土壌を整えてくれたことで、パンにとってはプラスに働いているところがあるんじゃないかなと思います。我々は“パン屋さんのパンの価値を向上させる”というのが裏ミッションでして、美味しいパンって“手頃で美味しい”じゃなくて、今提供している価格帯のパンが認められることに意味があると思っているんです」
「パン屋さんは今でも、小学生のなりたい職業に選ばれる憧れの職業ですが、実際には他の職業が選択されてしまう現状があります。そこに対して、我々もパン屋さんになりやすい、開業しやすい環境づくりができればと思っています。まずは“嗜好品”としてパン屋さんのパンの魅力が広まり、いろんなところで受け入れてもらえたら良いなと思っています」
からの記事と詳細 ( 廃業増加する街のベーカリー、広がる“冷凍パン×サブスク”が救世主に? - ORICON NEWS )
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